杉並区永福町

松戸のマルス


 久田の実家にも“マルス”という猫がいる。私達の共通の友人で現代音楽をやっている梶君という友達からもらった猫だ。実は彼が“物”にしたい女の子を誘うために私達は「だし」に使われ、結果的にこっちがなんか付きあうことになってしまったというよくある話。もちろん彼はうまくいかなかったようだが、そんなことはさておき…
 わたしは時々久田の実家にお邪魔しては、ご飯をいただいていた。初めて“おかく”を松戸に連れていった時のこと。“おかく”もそんなに気が強い猫ではないのだが、この“マルス”はもっと臆病な猫で、入り口で“おかく”に「ハーッ!!」とやられただけで隅っこに行ってしまった。


この子も数年前に16年という長寿をまとうしてあの世へ行った。なかなか私にはなついてくれなかった(というよりも人見知りの多い子だった)が、久田の実家(特にお母さん)では思いきりかわいがられていた。久田がもらってきたはずなのに途中からは母親が面倒を見るという、これもよくあるパターンだ。
他人のキッチンで、わが物顔でのさばる“おかく”と隅っこでそれを恨めしげに見ている“マルス”。これ以来長時間の滞在以外時には“おかく”を連れていくことを控えるようになった。ご飯のテーブルの上にあごを乗っけて、「なんかちょうだい」といっている“マルス”の姿が忘れられない。